登場人物
年齢:25 / 性別:女 / 身長:142cm

喫茶店『緑飴』の経営者。かつてヤガミ・トールが作詞した2曲を気に入っており、『もっと作詞をしてほしいなあ』と、いつも思っている。
五百木 冬風 (いおぎ ふゆか)
年齢:22 / 性別:女 / 身長:157cm

未虎と話が合う客。BUCK-TICKのシングルCD買おうと思ったら大概入手困難になっていて軽く落ち込む。
喫茶店『緑飴』店内──。
ミトラ「五百木(いおぎ)、これを見てくれ!」
フユカ「BUCK-TICKの最新作『スブロサ SUBROSA』ですね。後ろに飾ってあるのは……」
ミトラ「楽天ブックスで注文したからな、限定配送パックだ!」
フユカ「アタシは普通に注文したなぁ、その配送パック良いですね」
ミトラ「ふふーん、だろだろ? カウンターには同梱されてたアクセサリートレイも置いてあるぞ! さて、ローズティーができたぞ」
フユカ「良い香りですね。いただきます」
ミトラ「ところで、五百木はアルバム聴いたか?」
フユカ「じっくり聴きましたよ。味わうように、じっくりと。まずは未虎(みとら)さんの感想が聴きたいですね」
ミトラ「良かったぞ!」
フユカ「それは分かってますよ。もっと具体的に……」
ミトラ「そうか。まずはBUCK-TICKが動いていることが嬉しかったな。あとは『Mona Lisa OVERDRIVE』のような作風だなと思ったかな?」
フユカ「『Mona Lisa~』っぽいのは分かります。他には『SEXY STREAM LINER』の雰囲気も感じました。エレクトロ要素が主張していて、近年出たベストアルバム『CATALOGUE THE BEST 35th anniv.』のDISC-03が好きな人に向いてますね」
ミトラ「たしかにそうだな。そして注目はボーカルだ。今井さん(今井寿)と星野さん(星野英彦)のツインボーカルは聴いて驚いたな!」
フユカ「今井さんのボーカルは数曲あるので聴いたことあったのですが、星野さんのボーカルは新鮮でしたね。メンバーは星野さんの歌声はデモでずっと聴いていたみたいで、アタシ達と違って新鮮ではなかったみたいですけど」
ミトラ「五百木は先行シングルの"雷神 風神 - レゾナンス"は事前に聴いていたのか?」
フユカ「いえ、アタシはアルバムで通して聴きたかったので、我慢しました。MVも視聴もすべてシャットアウトして、アルバムまで取っておきましたね。未虎さんは?」
ミトラ「私もそうしたかったが、アルバムが出るまで我慢できなくてだな。先にそのシングル曲の感想を言うと、語弊があるかも知れんが『櫻井さん(櫻井敦司)が歌わない曲』だったな。……言って良かったかな?」
フユカ「良いと思います。アタシも……やって良いことではないと分かってたのですが、聴きながら頭の中で櫻井さんのボーカルを想定してました。サビメロは歌ってそうですが、AメロBメロは櫻井さん感がなくて、これが新生BUCK-TICKなんだって改めて思いました」
ミトラ「ふむふむ。では改めて、アルバムの曲目を見ていこうか」
フユカ「収録曲発表を確認した際、17曲というボリュームにも驚きましたし、曲名に今井節がこれでもかと出ていたから、なんかこう……安堵とワクワクが止まらなかったですよ」
ミトラ「よし、では改めてアルバムを聴きながら感想でも語るとするか」
百万那由多ノ塵SCUM
フユカ「生命の誕生をテーマにした浮遊感のある優しく美しいサウンドに、聴く前の緊張が解れていきましたよ」
ミトラ「SCUMというタイトルが付いてるので、聴く前はNAPALM DEATHの『SCUM』のような攻撃性があるものだと思ってたから、毎回私はBUCK-TICKに良い意味で裏切られまくってるな~、ハハハ!」
フユカ「アタシもですよ。しかも最初は今井さんの歌声とは気づかず、でもサビであの今井さんの声が聴けたとき、どことない安心感がありました」
ミトラ「1番サビが終わるとバンドサウンドになるところも良いよな。1曲目なのに何だろうな、このラストトラックのような穏やかさな心地は」
スブロサ SUBROSA
フユカ「その優しさから一転、スブロサ(薔薇の下)という名前の通り、下へ下へと降りて辿り着いたのはアンダーグラウンドの空間でした」
ミトラ「癖になるサウンドの中、怪しく唱えるようなラップがカッコよくて『或いはアナーキー』に入っている"DADA DISCO -G J T H B K H T D-"のようだ。タイトルトラックがダークで攻撃的なんてカッコイイな!」
夢遊猫 SLEEP WALK
フユカ「櫻井さんが愛している『猫』が曲名に入っていますが、元々意識していたワケではないらしいですね。でも結果的にリンクした内容になったみたいです」
ミトラ「可愛らしい曲と思ったら、シンセサイザーがどこか奇妙で怖さを感じるんだよな~」
From Now On
フユカ「半分インストのつもりで作成した星野さん作詞作曲の1曲ですね。星野さんの声、カッコイイですよね」
ミトラ「随所に登場するカッティングがTHE SMITHSのジョニー・マーっぽくて、これも好きなんだ」
フユカ「"From Now On"の内容は雑に訳すと【そう、始まったばかりなんだ。なにも心配することはない、まだまだ先は長いんだ。ああ、問題ない。心配しなくていいぜ】といった感じですね」
Rezisto
ミトラ「スブロサの様な地下空間にまだ滞在しているかのようなダークな楽曲で、遠藤ミチロウさんへのリスペクトが歌詞に入っているらしい。曲の雰囲気は『極東 I LOVE YOU』にあっても違和感ない気がするな」
フユカ「遠藤ミチロウさんと言うと、トリビュートアルバム『ロマンチスト ~THE STALIN・遠藤ミチロウTribute Album~』にBUCK-TICKが"おまえの犬になる"で参加していますね」
神経質な階段
ミトラ「インパクトのあるタイトルだ。インストが長めなのはライブにおけるメンバーのブレイクタイムでもあるそうだが、この長さに飽きは来ず、むしろ聴いていられるんだよなあ」
雷神 風神 - レゾナンス #rising
フユカ「インストで区切られたように始まるのは先行シングルですね」
ミトラ「先ほど解説したから省略するが、浮く事はなくしっかり溶け込んで『スブロサ SUBROSA』のピースとしてカッチリとハマっている」
冥王星で死ね
ミトラ「こちらも衝撃的なタイトルだが、タイトル自体は悪態をついているワケではないだろう」
フユカ「"スブロサ SUBROSA"のようなラップが繰り広げられますが、間に入る『 ガ ガ ガ ガ 』との対比が良くて、まるで美味しいものを交互に食べている気分ですよ」
遊星通信
ミトラ「DEEP PURPLE風味のブルージーな楽曲に、渋さを感じながらもどこか近未来的でもあって、凄く好みだぞ」
フユカ「現体制のBUCK-TICKの担当楽器が宇宙的名称で紹介されていて、どれも最高の名前です。勿論、その楽器でアルバムは奏でられています」
paradeno mori
フユカ「このアルバムの中ではアップテンポな楽曲ですね。星野さんの歌声に櫻井さんのようなセクシーさを憶えて、歌詞には素敵なメッセージで溢れています」
ミトラ「歌詞は"独壇場Beauty"でタイトルは『memento mori』のオマージュだ。前者はBUCK-TICK流のレクイエム、後者は『死を想え / 死を忘れるな』。それを『パレードノモリ』という造語に仕上げた星野さん、見事だ」
ストレリチア
フユカ「シタールのサウンドが心地いいですね」
ミトラ「オリエンタルな曲は好みだから、こちらも最後まで聴けるんだよな」
絶望という名の君へ
フユカ「星野さんの曲に今井さんが歌詞を乗せるのは初の試みで、これは星野さんからのリクエストだそうですね」
ミトラ「今井さんの歌詞と言えば、異端的な今井ワールドをこれでもかと披露するのだが、たまに素直でダイレクトに伝わるメッセージを描いてくる*1。この曲はソレなんだよな」
フユカ「シンセサイザーがダークですが曲自体はポップなのは、闇に差す光のようです。聴く度に沁みますよ」
ミトラ「あの時、悲しみに暮れたファンは確実にこの曲に救われたはずだ」
TIKI TIKI BOOM
フユカ「そんなエモーショナルな曲を抜けた先にあるのは荒廃した景色なんですよね」
ミトラ「まだまだ今井さんは攻撃の手を緩めていないということだ、でもそれが良いな! サビは一度聴くと暫く頭の中に延々と流れ続ける。中毒性は抜群だ」
プシュケー -PSYCHE-
ミトラ「こちらは"絶望という名の君へ"と同様、星野さん作曲今井さん作詞だな」
フユカ「歌声を聴いて一瞬、頭が真っ白になって……もちろん良い意味ですよ。それは星野さんのボーカルに櫻井さんを感じたんですよ。星野さんの身体を櫻井さんが借りて歌ったのかな? なんて思ってしまうほどに」
ミトラ「意外と間違っていないかも知れないぞ。プシュケーには『生命』や『魂』という意味も込められているらしいからな。まあ、今さっきWikipediaで調べたんだけどな」
ガブリエルのラッパ
フユカ「まるで"ノスタルジア -ヰタ メカニカリス-"のようにポエトリーリーディングを展開しますね」
ミトラ「途中のシネマチックなサウンドは、そのタイトル通り天使のラッパが響き終焉を告げるかのようだ」
海月
フユカ「3つめのインストは他2曲と比べると3分と短めで、エラー警報のような緊張感あるサウンドが海月のように漂っています」
黄昏のハウリング
ミトラ「アンダーグラウンドの世界を抜けると、そこに広がっていたのはアルバムアートワークのようなオーロラが満ちた場所だな」
フユカ「曲もどこか懐かしさを憶えて、その景色を見ながら佇んでしまいます。そして長めの後奏には今井さんのギターがタイトル通り叫んでいますね」
ミトラ「その叫びには震えたし、まだまだBUCK-TICKは挑戦をやめないと確信した」
ミトラ「ところで、曲数がなんで17曲というボリュームになったか知ってるか?」
フユカ「今のBUCK-TICKで演奏する曲を少しでも多くしたかったから、ですよね。今井さん曰く本当は2枚組にしたかったそうですよ」
ミトラ「気合の入り方が凄まじいよな! 五百木はアルバムで他に気になった点はあるか?」
フユカ「そうですね……これはギターとボーカルを兼任していることもあるからか、歌詞は全体的に繰り返してますね」
ミトラ「その方が歌いやすいと言うのもあるだろうな、でも覚えやすくて私は好きだ! 今回に始まったことではないが、"paradeno mori"以外にも他の曲に過去のワードが鏤められていることも良かったな」
フユカ「【祈りと希い*2】【キュビズム*3】【メタルの空*4】とかですかね。そういえば歌メロは抑えめですが、これは櫻井さんが居ないことを逆手に取ったみたいです」
ミトラ「それであのボーカルスタイルということか! あと、4人で最初にレコーディングした曲はこのアルバムに入ってないらしいな」
フユカ「確か、歌詞が櫻井さんに宛てた内容で、いま収録すると露骨すぎるからでしたっけ。今後、音源化するのを期待したいですね」
ミトラ「だな! やはりBUCK-TICKは素晴らしいバンドだ。他のアルバムが聴きたくなってきた……」
フユカ「お、じゃあいまから聴きますか?」
ミトラ「ホントか! どのアルバムが聴きたいとかリクエストはあるか?」