登場人物
年齢:25 / 性別:女 / 身長:142cm

喫茶店『緑飴』の経営者。味噌汁は赤味噌が好き。
五百木 冬風 (いおぎ ふゆか)
年齢:22 / 性別:女 / 身長:157cm

未虎と話が合う客。味噌汁が美味しい店があったら行ってみたい。
喫茶店『緑飴』店内──。
ミトラ「へー、このバンドは名前しか知らなかったのだが、とてもカッコイイな!」
フユカ「未虎さんが気に入ってくれて良かったです! 解散したのは残念でしたよ」
ミトラ「そうか、だが作品は集めたいものだな。……ん、ちょっと待ってくれ」
フユカ「あれ、どうしたんですか。外出ですか?」
→沙魚川、勢い良く扉を開ける
???「わああっ!! び、びっくりした!」
ミトラ「もしかして、この店が気になったのか!? 大歓迎だぞ!」
???「え、えっと、そのー……」
ミトラ「せっかくだから、入ってくれ。コーヒー1杯ならタダで構わないぞ」
フユカ(随分スタイルの良い美人さんがやってきたなあ……)
ミトラ「……なるほど、君の店の商品をプロモーションしているんだな。何という店なんだ?」
雑貨店「ええ、『すかーれっと』という雑貨店よ。ハンドメイドの雑貨や食品を取り扱っているわ」
ミトラ「ほう、そうなのか。すかーれっと……あまり聞かない名前だな」
雑貨店「最近オープンしたのよ。まあ、鳴かず飛ばずなんだけどね……」
フユカ「なるほどー……マップアプリで調べてみたのですが、近所にあるみたいですよ。レビューは……」
ミトラ「なかなか評価は低いんだな」
フユカ「ちょ、ちょっと未虎さん?!」
雑貨店「まあ評価なんて気にしていたら何も出来ないから、『対応が下手くそ』『商品がどれも趣味が悪い』なんてレビュー、あたしは気にしていないわ」
フユカ「そうですか……(恐らく気にしているんだろうなあ……)」
ミトラ「ところで、そのプロモーションしている商品というのはどれなんだ?」
雑貨店「これね。バタフライピーを使った青いフリーズドライ味噌汁よ」
フユカ「(本当に趣味が悪い……!)……あ、お客さんが来ましたよ」
ミトラ「おー。魚屋のおっちゃんだ、いらっしゃい」
魚屋「おう、冬風ちゃんも来てたのか! 休みの合間にコーヒーを飲みにきたよ。……ってアンタ、まだここに居たのか!」
ミトラ・フユカ『!?』
ミトラ「おっちゃん、この人を知ってるのか?」
魚屋「未虎ちゃん、コイツは変なものを押し売りするヤツだ! 早く追い出した方が良いよ!」
雑貨店「へ、変なものって。確かに商店街の全ての店で門前払いされたけど……」
フユカ「でも、青色の味噌汁は変なものですよ。そりゃあ確かに商店街の人は引くでしょうね……」
ミトラ「なるほどなー……」
フユカ「未虎さん、趣味悪い商品なので魚屋さんの言う通りに──」
ミトラ「せっかくだから、いただいても良いだろうか」
魚屋・雑貨店・フユカ『え!?』
フユカ「白い陶器に真っ青なフリーズドライのブロック……食品とは思えない色してますよ」
魚屋「未虎ちゃん、やめときなって! どう見ても食べて良い色じゃないだろ!」
ミトラ「おいおい、それが何だと言うんだ? 五百木とおっちゃんが引いている理由は色だろ? 私が気にするのは、味がマズイかどうかだ」
フユカ(グルメ漫画のセリフみたいなことを言うなぁ、これ、音楽ブログのはずなんだけど……)
ミトラ「では、お湯を注ぐぞー」
魚屋「お、おい……こんな食欲が湧かない味噌汁初めて見たんだが」
フユカ「あの、この見た目になることを想定して作成したんですか?」
雑貨店「あたしにはとても良いものに見えるわよ」
魚屋「いや、どこが良いんだ。マズそうな見た目だろ!」
ミトラ「バタフライピー、いわゆるチョウマメの花を乾燥させたハーブティーが有名だが、それ以外では青色の料理を作る際に用いるんだ。正直、青色の味噌汁を作る際に食用青色1号といった着色料を使わないのは良いことだよな」
フユカ「それはそうですけど……」
ミトラ「……ふむ、旨いぞ。見た目が何とも言えないが、フリーズドライの具材を変えて色味に合うようにしてみてはどうだ? 良かったら私の店に置いても構わないぞ」
フユカ「え!! 未虎さん、言わされてないですか!?」
ミトラ「五百木とおっちゃんも飲んでみてくれ」
フユカ「未虎さんが言うなら……。ああ、でも味は美味しい味噌汁ですね」
魚屋「確かに旨いけどな、あまり褒めたくないなぁ」
ミトラ「わはは、おっちゃんはプライド高いなぁ~! おっちゃんの店で取り扱ってる魚を入れたら、海を泳ぐ魚みたくなるんじゃないか?」
魚屋「いや、あら汁なら分かるが、それは流石に不気味に拍車がかかるだろ~。いや、あら汁もこの色だと不気味なのは変わりないな」
フユカ「アハハ、ホントですよ」
魚屋「……まあ、努力して商品を作ってるのは何となく分かった。流石に俺の店に置けねえけど、他の店にもこっちから勧めてみるとするか」
雑貨店「え……! い、良いんですか!?」
魚屋「そうじゃねえと、未虎ちゃんを無下にすることにもなるだろ? 未虎ちゃんはこの商店街を盛り上げてくれてるんだから、アンタのためって言うワケじゃあないからな」
ミトラ「おっちゃんも気に入ってくれて良かったぞ!」
魚屋「いやいや、俺は気に入ってはいないんだが……あ、そろそろ戻らねえと。コーヒー飲めずじまいか~」
ミトラ「そうだ! 乾燥バタフライピーがあるから、それでハーブティーを淹れるとしよう。おっちゃんも飲んでってくれ!」
魚屋「そ、そうか? じゃあお言葉に甘えるとするか……」
フユカ「とても綺麗な青色ですね! 先ほどの味噌汁とは大違いですよ……。ほんのり甘みがあって、スッキリとしてますね」
ミトラ「で、コレは有名だから知ってると思うが、ここにレモン汁を落とすと紫色に変化するんだ」
魚屋「なるほどな~、俺にはこのオシャレな飲み物がよく分かんねえけど、なかなか面白いな」
ミトラ「そこの君はどうだ?」
雑貨店「凄く良いわね……味噌汁にレモンを足したら紫になるってことよね」
ミトラ「クエン酸を入れたら良いから、梅を入れてみてはどうだ?」
フユカ「未虎さん、紫の味噌汁はもっと見た目ヤバいことになりますって」
魚屋「ははは、冬風ちゃんの言う通りだ」
19時、閉店時間──。
ミトラ「さてと、掃除でもするか。……ん、来客か? すまない、もう今日は終了した──って、君は昼に来ていた……」
雑貨店「時間外にごめんなさい。……あの、今日はありがとう。どのお店からも突っぱねられて正直ツラかったんだけど、唯一褒めてくれたのが……その、みとら……さん?」
ミトラ「自己紹介していなかったな、私は沙魚川未虎だ。そうだ、コーヒーをタダで良いと言っていたのに出していなかったな、せっかくだから座ってくれ」
ミトラ「出来たぞ、エスプレッソだ」
雑貨店「いただきます。……あの、沙魚川さんが居なかったら……たぶん店を畳んでたと思う」
ミトラ「そんな雰囲気はめちゃめちゃ出ていたなあ」
雑貨店「えっ??」
ミトラ「私も似てる状況あったからな。この店に五百木というバタフライピーを使ったような青色の女が来てくれて、それから商店街の人たちも通ってくれるようになったんだが、それまでは閑古鳥が鳴いていた」
雑貨店「……その五百木さんという方から少し話を伺ったんだけど、沙魚川さんって昔から一人きりだったって」
ミトラ「そうだ。友達なんて一人も居ない、五百木は私を友達扱いしてくれてるみたいだが。そんな面倒臭い過去があるからか、君が苦悩しているのが何となく伝わったんだよな」
雑貨店「友達居ないように見えないのに、沙魚川さんってしっかりしているのね」
ミトラ「んー、そんなことはないぞ。私はとてつもなく雑魚だから誰とも絡めなかったんだ。商店街の人たちは私の子供っぽい見た目を気に入ってくれてるらしく、それで可愛がって貰えてるんだ」
雑貨店「そう……。あたし、沙魚川さんと今後も仲良くしたいから、このお店にまた来るわね」
ミトラ「それは嬉しいな。音楽が好きだから音楽の話ばかりになるが、来店待ってるぞ。まあ、最近は音楽ネタが少なくなってきているのだが」
雑貨店「そ、そうなのね……」
ミトラ「あと、魚屋のおっちゃんから君に渡して欲しいと、貰ってたものがあるんだ。強く当たったから、そのお詫びだろうな。直接渡せば良いのにプライドが高いよな~」
雑貨店「……アジフライとさば味噌、とても嬉しいわ。コーヒー、ごちそうさまでした」
ミトラ「改めてよろしくな! ……今度、その雑貨店に行ってみるか!」