登場人物
年齢:25 / 性別:女 / 身長:142cm

喫茶店『緑飴』の経営者。初めて一蘭に行ってから、暫く他のラーメンを食べる気が起きなかった。
五百木 冬風 (いおぎ ふゆか)
年齢:22 / 性別:女 / 身長:157cm

未虎と話が合う客。一蘭には焼豚皿とビールがあるので、いつか一人呑みをしてみたい。
小永光 蘭那 (こながみつ らんな)
年齢:24 / 性別:女 / 身長:152cm

雑貨店『すかーれっと』の経営者。一蘭に行ったことがない。
昼。小倉駅付近──。
フユカ「色んな服飾雑貨店を巡ってますねぇ」
ランナ「そうね、あたしのお店には無いものがあって、参考になるというか刺激を受けるというか」
ミトラ「私も店を始めた当初、似たようなことをやっていたなあ」
ランナ「……あ、もう13時なのね。お昼どうしようかしら」
フユカ「そうですねー……一蘭行きますか? 近くにありますし」
ミトラ「少し前に五百木と一蘭の話で盛り上がっていたし、久しぶりに行きたいな!」
フユカ「そうなんですよ! あの話をしてから、一蘭に行きたくて」
ランナ「一蘭、ねぇ……」
フユカ「蘭那さんは一蘭に行ったことありますか?」
ランナ「実は行ったことなくて。そもそもあたし、外食はしないのよね。その、苦手とかじゃなくって、なかなか値段するじゃない? だからお家で済ませたら良いかなって」
ミトラ「なるほどな。確かに高いから私も頻繁に外食しないんだけどな。ということで、一蘭の近くまで来たぞ」
ランナ「あ、一蘭に向かって歩いていたのね……お店の佇まいが独特ねぇ」
フユカ「一目で一蘭と分かるので良いですよね。今はお客さん並んでいないので、早速券売機を利用しましょっか」
ランナ「あら、ラーメン屋にしては珍しく、ラインナップが豚骨ラーメンひとつだけなのね」
ミトラ「一蘭は他の味はなく、看板のラーメン一本でやっているんだ」
ランナ「なるほど、それは随分自身があるということねぇ。じゃあ、そのラーメンをいただくわ」
フユカ「アハハ、食べたら分かりますよ。未虎さん、以前気になってたと言ってたオスカランの酸味、今回試してみます?」
ミトラ「そうだな! せっかくだから私はそのトッピングも注文するとしよう」
フユカ「アタシはそれに加えてごはんも注文します! では、店内に入りましょうか」
ランナ「すぐに席があるワケじゃなくて、廊下みたいな通路があるのね」
ミトラ「ここはお客さんが多い時に待つところだな。その間に店員からオーダー用紙を渡されるな」
ランナ「オーダー用紙というのは……?」
ミトラ「それは席についたら分かるぞ。では暖簾をくぐって入るとしよう」
ランナ「な、何よこの光景は……! 全てカウンター席で、ひとつひとつの席に仕切りがあるわよ」
店員「ご来店、ありがとうございます! ご記入が終わりましたら、こちらのボタンを押してください!」
ランナ「……え、店員の顔が見えない!? 何から何まで不思議すぎるわ!」
ミトラ「"何から何まで"ってZIGZOの曲名だろうか。冗談は置いといて、初めて一蘭に来た人のリアクションは面白いものだな。私も初来店はそんな感じだったぞ」
フユカ「ですね。まるで箱入り娘のような反応が良いですねぇ」
ランナ「な、なんで二人ともそんなにニヤついてるのよ……で、これが先ほど沙魚川さんが言ってたオーダー用紙ね」
ミトラ「そうだ。味の濃さやにんにくの有無、秘伝のたれの量等、自分自身の拘泥を設定することで、同じラーメンでも自分だけの一蘭ラーメンがいただけるということだ!」
ランナ「それは面白いわね! ところで、その秘伝のたれって何かしら」
ミトラ「唐辛子を使った、いわば味変のたれだな。一蘭のラーメンをいただくなら欠かせないものだ。その説明を含めた一蘭のこだわりについては目の前に掲示されているから、出来上がりを待つ間に目を通しておくといいぞ」
ランナ「あら、ホントね。ここまでこだわりが強いだなんて、益々気になってきたわ」
ミトラ「ちなみに破線の丸は初めてのお客さんにオススメの設定だ。小永光はそれを選ぶと良いだろう」
ランナ「そうなのね。沙魚川さんが言うなら、それにするわ」
フユカ「あと、箸の袋には追加注文できるように、メニューが載っているんですよ。もし替え玉やライスが注文したかったら、こちらに丸をつけてお金を用意すると良いですよ!」
ランナ「ホントね! なかなか面白いわねぇ」
店員「お待たせいたしました! それでは、ごゆっくりどうぞ!」
ランナ「あ、ありがとうござい──はっ! 店員の顔が見えないどころか、簾が降りてとうとう何も見えなくなったわ!」
フユカ「自分だけの空間になったと思いませんか?」
ランナ「た、確かに簾が降りて店員さんの視線は感じなくなったし、仕切りがあることで隣のお客さんの視線も気にならない……本当にあたしだけの空間になったわよ。おひとり様だと素敵な取り組みと思うのだけど、これはどうしてなのかしら?」
ミトラ「これが一蘭特有の味集中カウンターと言って、先ほど小永光が言ったように他の人を気にすることなく、カスタムしたラーメンを食べるという、自分の時間が過ごせるという仕組みだ*1」
ランナ「そうなのね! ラーメンを食べる自分だけの時間……素敵じゃないの! そしてこの真ん中にあるのが1/2で設定した秘伝のたれかしら?」
フユカ「そうです! まずは混ぜないで、周囲のスープからいただいてみてください」
ランナ「ええ、分かったわ。…………ヘ!? あたしが思っていた豚骨ラーメンの味と全然違って、今までにない味……こ、こんなに美味しいの!? テレビや会話で一蘭とはよく聞くからそんなに関心を持ってなかったのだけれど……これは、美味しすぎるわ!」
ミトラ「ふふん、これが一蘭だぞー。気に入ってくれて嬉しいな」
ランナ「麺も良い食感でスープに合うこと合うこと……はっ! 秘伝のたれを混ぜなきゃ!」
ミトラ「さて五百木、このオスカランの酸味だが、投入のタイミングどうしようか」
フユカ「ですよねぇ……後に入れると酢の味が強くなりすぎる気がするので、最初から入れてみますか?」
ミトラ「そうしてみるか! ……なるほど、当然だがさっぱりとしたスープになるな」
フユカ「酢が主張しすぎていないのは本来のスープが強いからで、上手く共存できていますね」
ミトラ「秘伝のたれを混ぜると良い味変になるな。これは新しい発見をしたぞ!」
フユカ「でも一蘭の定番トッピングですから、アタシたちの発見は随分遅いんですけどねぇ」
ランナ「スープを飲み干してしまった……普段は塩分を抑えるために残すのに、一蘭は美味しすぎて……!」
フユカ「蘭那さん、お待たせしました。アタシと未虎さんも食べ終えたので、行きましょっか」
ランナ「そうね。二人が食べ終えるまでの間、感想用紙に初めて一蘭に来た思いをしたためていたわ」
ミトラ「よっぽど感動したということだな、嬉しいぞ。ちなみに出口の通路には商品が並んでいて、店員に言えば買うことも出来るらしい」
フユカ「一度、袋のちぢれ麺タイプを買って食べてみたのですが、正直お店の味とは違いましたね……今度、ストレート麺タイプの箱の方を買って食べてみようと思います」
ランナ「それにしても、一蘭のラーメンがこんなに美味しかっただなんて……今まで避けてたあたしが情けない程よ」
ミトラ「ではいつか、天神西通りの一蘭に行ってみるか! まだ私も味わったことがないものがあるんだ」
ランナ「あら、小倉も天神も同じなんじゃないの?」
フユカ「あの店舗にしかない釜だれとんこつラーメンがあるんですよ、一蘭が好きになったなら是非食べてみて欲しいです!」
ランナ「さっき食べたラーメンがあんなに美味しかったのに、天神西通りの方はまた異なるって言うの?! 行きましょう、是非行きましょう!」
ミトラ「ハハハ、小永光が一蘭にハマってくれて何よりだ。博多に行く時は誘うから、待っていてくれ!」
関連リンク
*1:店員さんに言えば、仕切りを外すことも出来るらしい