登場人物
年齢:25 / 性別:女 / 身長:142cm

喫茶店『緑飴』の経営者。"SEA OF FATE"のギターソロが好き。
五百木 冬風 (いおぎ ふゆか)
年齢:22 / 性別:女 / 身長:157cm

未虎と話が合う客。Alex Holzwarthが加入した後にレコーディングで参加していたドラマーの『Thunderforce』って結局何だったのだろうか。
小永光 蘭那 (こながみつ らんな)
年齢:24 / 性別:女 / 身長:152cm

雑貨店『すかーれっと』の経営者。RHAPSODY OF FIREを知らない。
喫茶店『緑飴』店内──。
ミトラ「メタルの話になると、たまに会話で出てくるものがあるのだが、分かるか?」
ランナ「まだメタルに慣れていないから分からないわね……」
ミトラ「そりゃそうか。もしかすると、メタルを知らなくても聞いたことがあるかも知れないが、小永光のようにまったく触れたことない人には難しいよな」
ランナ「そうねぇ……宜しければヒントを」
ミトラ「ヒントは悪を倒すために必要な武器だ」
ランナ「……え?? 何よソレ」
ミトラ「では五百木、答えを言ってくれ」
フユカ「はい。エメラルド・ソードですね」
ミトラ「そう、エメラルド・ソードだ」
ランナ「え、えめらるど、そーど……?? ファンタジーの武器みたいな名前が出てきたわね……」
ミトラ「と言うことで、小永光にエメラルド・ソードにまつわるファンタジーを描いたメタルバンド、RHAPSODY OF FIREを教えてやりたいんだ」
フユカ「メタルを教えるなら、やはりRHAPSODY OF FIREは知っておいて欲しいんですよね」
ランナ「ラプソディー……管弦楽曲の"Rhapsody in Blue"なら知ってるのだけど、RHAPSODY OF FIREというバンドが居るのね。分かったわ。それで二人と話が盛り上がれるなら、そのバンドを知っておきたいわね」
ミトラ「RHAPSODY OF FIREの母体は、1993年頃にギターボーカルのLuca TurilliとキーボードのAlex Staropoliを中心にイタリアで結成されたTHUNDERCROSSというバンドだ。そこからRHAPSODYに改名して専任ボーカルが加入したが、1995年頃にFabio Lioneが加入して、1997年に最初のアルバム『LEGENDARY TALES』がリリースされたワケだ」
ランナ「最初のアルバムを出すまでに、だいぶ年数がかかったのね」
フユカ「そうですね。でもこの作品からエメラルド・ソード・サーガが始まったんですよ」
ランナ「え? サーガ?」
ミトラ「RHAPSODY OF FIREはギターのLucaがほぼ全ての歌詞と物語を書いているんだ*1。1枚で完結することなく、物語は数枚続くぞ」
ランナ「なかなかこだわりが強いのね。どんなストーリーなの?」
ミトラ「ざっくり言うと、氷の戦士が悪を倒すためにエメラルドの剣を求めて旅する内容だな。イラスト付きでストーリーを記載しているブログがあるが、リンクを貼って良いか分からないので後で検索してみてくれ」
ランナ「RPGのようなファンタジーね。各楽曲がストーリーの一片になってるってことは、シャッフル再生には不向きってことかしら」
フユカ「それがそんなことないですよ~、歌詞は英語と母国語ですし、一曲一曲は繋がっていないので、歌詞に重視さえしなければ聴けますよ」
ミトラ「物語と言っても、そこまでストーリー重視で聴いてはいないよな? 本当は対訳がしっかりしていたらちゃんと把握しておきたかったのだが」
ランナ「……え? その言い方からして、対訳が良くないってこと?」
フユカ「それがその通りなんですよ。対訳を担当した方がいらっしゃるのですが、その……一部間違った訳をしているんですよ*2」
ランナ「そうなの?! それって国内盤を買う意味が薄れるじゃないのよ!」
ミトラ「とは言えRHAPSODY OF FIREに限らず、他のバンドの作品でも対訳が違う箇所なんてたくさんあるけどな*3。でも、その対訳の間違え方を好んでいる物好きも居るらしいぞ。マズイ料理を好む人みたいだよな」
フユカ「本当に物語を好む人はそれぞれ訳して解釈するので、対訳やライナーノーツを気にしなければ、国内盤は買わなくても良いですよ」
ランナ「それなのに、あたしにこのバンドを勧めるのはどうして?」
ミトラ「それはRHAPSODY OF FIREの音楽がカッコイイからだ! あと、物語的な音楽は後続のバンドに影響を与えているし、知っておいて欲しかったんだ」
ランナ「そうなのね。ところで、1枚目のアルバムアートワークを見てるのだけれど、何と言うか、この……」
フユカ「絵がダサイですよね?」
ランナ「え! い、言わないようにしていたのに……!」
ミトラ「全員そう思うから問題ないし、慣れてくるとこの絵が良いと思えるぞ。2枚目も同じイラストレーターで、3枚目から変わっているな」
フユカ「では、1枚目『LEGENDARY TALES』から"WARRIOR OF ICE"を聴いてみましょう!」
ランナ「思ったのはボーカルがとても上手ね。そしてこの激しい感じがメタル……以前ANTHEMでも同じことを思ったけど、ちょっと魅力を感じるわね」
ミトラ「おお、良い感性だな。小永光の言う通りでFabioの歌は上手くて、様々なバンドにゲスト参加する等、とても信頼されているんだ」
ランナ「あと、途中で雰囲気が変わったわね。異国の雰囲気を感じると言うか……これが物語的音楽なのかしら」
フユカ「それもありますし、メタルバンドによっては曲調が変わりまくることはありますからね。では次は2枚目『SYMPHONY OF ENCHANTED LANDS』から"EMERALD SWORD"を聴きましょう!」
ランナ「あら、先ほどからよく出てくるエメラルド・ソードはここで曲名になるのね。物語自体はひとつ前の作品から始まっているのよね?」
ミトラ「そうだな。でも長渕剛の『風は南から』というアルバムに"風は南から"は入っていないが、次のアルバムに入っているみたいなものだな」
ランナ「……?」
フユカ「未虎さん、それは蘭那さんには分からないと思いますよ。とりあえず聴きましょうか」
ランナ「始まり方が不自然だったけど、前の曲と繋がっていないかしら?」
ミトラ「ああ、先ほどシャッフル再生しても問題ないとは言ったが、インストと繋がっている場合があるから、そこは要注意だ。イントロがちゃんとしている方はシングルかベストアルバムで聴けるぞ」
ランナ「そうなのね。それにしてもカッコイイ曲ね! サビは思わず合唱したくなるほど壮大で熱くなるわ。他の曲も気になってきたわよ! ところで、二人はRHAPSODY OF FIREって言ってるけど、このバンドってRHAPSODYよね?」
ミトラ「ああ、それは諸々の事情でRHAPSODYが使えなくなって、2006年頃に改名したんだ」
フユカ「正直、OF FIREって捻りがないのは確かですよね。MinstreliXのLeo Figaroさんは『まだOF ICEの方が良かったのでは』と言ってましたよ」
ミトラ「そのMinstreliXは今度教えるとしよう」
ランナ「そ、そうなのね……」
ミトラ「よし、次は12枚目『THE EIGHTH MOUNTAIN』から──」
ランナ「え!? ちょ、ちょっと待って! さっき2枚目だったのに、飛びすぎじゃない?!」
フユカ「ひとまずRHAPSODYは1stと2ndを聴いていただければと思います。そこから3枚目以降を聴いてみてほしいです。勿論名作ですよ」
ミトラ「と言うことで、『THE EIGHTH MOUNTAIN』から"RAIN OF FURY"を聴くとするか!」
ランナ「……あの、ボーカルが違うような気がするんだけど。Fabioさんって人は辞めたの?」
フユカ「はい。その前に、ずっと物語を書き続けていたLucaも9枚目のアルバムを以て脱退していますよ」
ランナ「最早別のバンドじゃないのよ! それで聴かせたのね?!」
ミトラ「Luca脱退後もFabioは11枚目まで在籍していたのだが、Alex StaropoliにFacebookで『俺はもう辞めたから』と言って急に脱退したんだ」
ランナ「そんな辞め方は酷じゃないの? じゃあ今もAlexさんって人は残っているのね。よく折れることなく続いているわね」
フユカ「AlexはRHAPSODY OF FIREの作曲を担う一人ですから、メンバーが変わってもブレていないですよ」
ランナ「そうなのね。確かに曲の激しさは健在で、かなりスピーディだしとてもカッコイイ曲だわ! その、Lucaさんって人が居ないってことは、もう物語形式ではなくなったのかしら?」
ミトラ「それが新ボーカルにGiacomo Voliを迎え入れてから新たな物語が始まったんだ。ネフィリムズ・エンパイア・サーガだ」
ランナ「新たなサーガが始まったのね! でも作詞はどなたが?」
フユカ「GiacomoやAlexが書いていますね。ラテン語はギターのRoby De Micheliが担当しているみたいです」
ミトラ「やはりRHAPSODY OF FIREという看板を背負う以上、サーガを作らなくてはと思ったのだろう」
ランナ「なるほどねぇ。ところで、エメラルド・ソード・サーガはLucaさん在籍時まで続いたってことよね。Fabioさんが脱退するまでの間はどうしていたの?」
ミトラ「エメラルド・ソード・サーガは厳密には5枚目『POWER OF THE DRAGONFLAME』で一旦完結しているんだ。6枚目の『SYMPHONY OF ENCHANTED LANDS II -The Dark Secret-』からダーク・シークレット・サーガとして新章が始動したワケだが、エメラルド・ソード・サーガの続編みたいなものだな。Luca脱退後からFabio脱退までの2作品は物語をやっていないぞ」
フユカ「そのダーク・シークレット・サーガですが、複雑な内容になっていて付いて行きづらいですよね。当初のハイ・ファンタジーと若干異なるので難しいです」
ミトラ「確かにな。Dar-KunorだとかHar-Kuunだとか何の話なんだって思うよな。ダーク・シークレット・サーガはひとまず曲だけ聴いていれば良いと思うぞ」
ランナ「そ、そう……。じゃあ、たくさん出ているアルバムから、オススメの作品を教えていただけるかしら?」
ミトラ「では、私と五百木で選んだFabio時代の作品を紹介しよう」
- LEGENDARY TALES
- SYMPHONY OF ENCHANTED LANDS
- DAWN OF VICTORY
- POWER OF THE DRAGONFLAME
- THE FROZEN TEARS OF ANGELS
- FROM CHAOS TO ETERNITY
- INTO THE LEGEND
フユカ「エメラルド・ソード・サーガ時代はほぼ全てですね。4枚目『RAIN OF A THOUSAND FLAMES』は表題曲がカッコイイのですが、他は長くてインパクトがあまりないので、敢えてオススメに挙げていません」
ミトラ「ダーク・シークレット・サーガ時代は以前の作品を知っている人からしたら、パンチに欠けるだろうけど、勿論良い曲はたくさんあるぞ。その中でも8枚目と9枚目だな」
フユカ「Luca脱退後、Fabio在籍時最後の作品である11枚目は気合が入っていてとても良いのですが、10枚目『DARK WINGS OF STEEL』は正直オススメしません」
ランナ「参考にするわね。ところで、新しいボーカルのGiacomoさんになってからの作品はどうなのかしら?」
ミトラ「今出ている3作品はどれも良いよな」
フユカ「正直、Giacomoを迎え入れてから活気を取り戻したと思っています。GiacomoはFabioという偉大なボーカリストを凌ぐレベルの上手さですし、3作品全てオススメです」
ランナ「あら、Alexさんという方は凄いわね。ディスコグラフィを確認したのだけれど、もう1作品ないかしら?」
ミトラ「ああ、『LEGENDARY YEARS』だな。それはエメラルド・ソード・サーガ時代の5作品から選曲された14曲*4を今の体制*5でリテイクしたアルバムだな。これは往年の楽曲を取り扱っていることもあってか、賛否両論だな。私は好きなんだが」
ランナ「そうなのね。確かに黄金期の楽曲だから、上回るのは難しいものね」
フユカ「アタシも好きですよ。どうして評価が低いのか分からないほどです」
ミトラ「LucaはRHAPSODY在籍時にソロ活動をやっていたのだが、そのアルバムを2枚紹介するか」
ランナ「脱退後ではなく在籍中なのね」
フユカ「はい。『KING OF THE NORDIC TWILIGHT』と『PROPHET OF THE LAST ECLIPSE』がありますが、ジャケットを見て何か気付くことはないですか?」
ランナ「えーっと……あ! これって『LEGENDARY TALES』と『POWER OF THE DRAGONFLAME』の2作品と構図が似ているわね。もしかして、こちらもサーガなの?」
ミトラ「そうだ。RHAPSODYのサーガとは別だが、『KING OF THE NORDIC TWILIGHT』はバーチャル・オデッセイ・サーガで、『PROPHET OF THE LAST ECLIPSE』はダーク・コメット・サーガと、それぞれ異なっているな」
ランナ「エメラルド・ソード・サーガと違って数枚かけて続いているワケじゃないのね。Lucaさんのソロ作品は2作だけなの?」
フユカ「3枚目の『THE INFINITE WONDERS OF CREATION』もありますが、先ほどの2作品と違って音楽性が全く違います。メタル要素は薄く、RHAPSODYのような音楽ではないので、正直オススメしません。勿論、好んでいる人も居ますよ」
ミトラ「では、次にLuca Turilli's RHAPSODYの話でもするか」
ランナ「……え?? どう言うこと? と言うか、先ほど話したLucaさんのソロとはまた別なの?」
フユカ「Lucaのソロとは別ですね。こちらはLucaがRHAPSODYを脱退してから始動しました。まずどうして脱退したのかと言う話ですが、AlexとLucaという二人のコンポーザーがそれぞれ異なるRHAPSODYとして音楽を作っていこうという話になったみたいで、友好的な分裂をしたんですよ。当初は」
ランナ「それがLucaさんが脱退した所以なのね。Alexさん側がRHAPSODY OF FIREを継続して、Lucaさんが自身の名前を用いたRHAPSODYということ。……というか、『当初は』って言わなかった?」
ミトラ「友好的分裂と思われていたのだが、途中でRHAPSODY OF FIREからFabioとドラマーのAlex Holzwarthが脱退して、Lucaと合流してAlex Staropoliを除いたRHAPSODYがライブを始めたんだ」
ランナ「は?? 何よソレ……」
ミトラ「その前に、Lucaの方のRHAPSODYの話に戻すか。Luca Turilli's RHAPSODYはアルバムが『ASCENDING TO INFINITY』『PROMETHEUS~Symphonia Ignis Divinus』の2枚があるのだが、どれも演奏が豪華すぎるという点がある」
フユカ「特に2枚目はオーケストラをふんだんに使った豪華さで、メタル要素はあるとしても着飾りすぎているような気がしますね」
ランナ「Lucaさんのソロ作品は3枚目がイマイチって言ってたけど、こちらの2作品はどうなの?」
ミトラ「1枚目は割と好きだな。ちなみにこちらのRHAPSODYはサーガをやっていないから、物語というものはあまりないな」
ランナ「あら、Lucaさん側は物語を書いているものと思っていたわ。それで、先ほど話していたLucaさんとFabioさんたちが合流したRHAPSODYと言うのは……?」
ミトラ「名義としてはRHAPSODY REUNION、乃至はそのままのRHAPSODYと呼ばれて、RHAPSODYを終わらせるフェアウェルツアーを始めたんだ。ちなみにオリジナルメンバーという話らしいが、厳密にはオリジナルメンバーはLucaだけだな」
ランナ「フェアウェル(お別れ)って、本家のRHAPSODY OF FIREが存在するのに? Alexさんはソレを知っていたの?」
フユカ「Lucaから話があったとのことですが、Alexは断ったみたいですね。Alex以外の行動について、本人は気にしていないという話です」
ミトラ「で、Fabioたちと合流したLucaは手ごたえがあったのか分からないが、Luca Turilli's RHAPSODYを終わらせて、Turilli / Lione RHAPSODYを始動したんだ。Alexはこれに関して『何度も改名して何がやりたいんだ』と呆れていたから、もうRHAPSODYのファミリーはボロボロだな」
ランナ「友好的分裂とは言えないわね……でもいわゆる黄金期のRHAPSODYって、物語を書いていたLucaさんと看板シンガーのFabioさんが居る方になるから、RHAPSODY OF FIREより支持されそうな気がするわ」
ミトラ「と、思うだろ? まずは以下の記事からTurilli / Lione RHAPSODYのロゴを見てくれ」
ランナ「本来のロゴとは異なるわね、ファンタジーっぽさが無いと言うか」
フユカ「ブートレグに使われてそうなロゴですよね。そのTurilli / Lione RHAPSODYはアルバム『ZERO GRAVITY~Rebirth and Evolution』を出したのですが、せっかくなので聴いてみますか」
ランナ「……演奏はしっかりしているし、Fabioさんの歌声が健在なのは間違いないのだけれど……なんか、らしくないわよ」
ミトラ「そう、サーガのブレインであり、本来のRHAPSODYでイニシアチブをとっていたはずのLucaが居るにもかかわらず、あまり良くないんだ」
フユカ「正直、空回りしているなと思いましたし、何なら新たにメンバーを揃えたRHAPSODY OF FIREの方がちゃんとRHAPSODYをやってますよね」
ランナ「比較するのはあまり良くないとは言え、Alexさんが居るRHAPSODY OF FIREの方が圧倒的に良いわよ。Turilli / Lione RHAPSODYのメンバーは間違いなく本物なのに、どうしてこの作風なのかしら……」
ミトラ「それもあってなのか、Turilli / Lione RHAPSODYはアルバム1枚で解散したしまったんだ。だから分裂とは言ったが、結局今はRHAPSODY OF FIREひとつだけだ」
ランナ「そうなのね……何と言うか、こんな事になるなんて、応援しているファンも大変ね……」
ミトラ「と言うことで、ササッとRHAPSODY OF FIREについて話してみたのだが、どうだったか?」
ランナ「とてもカッコイイバンドと思ったわね。LucaさんとFabioさんがあんなことしたのはガッカリだけど……。今のボーカルであるGiacomoさんの歌声もとても素敵だし、今後も応援していきたいわ!」
フユカ「それは良かったです! RHAPSODY OF FIREはファンタジー要素は勿論、演奏も素晴らしいので今後も興味を持っていただけたら嬉しいです!」